『なみのこえ 気仙沼』『なみのこえ 新地町』は、東日本大震災における津波被災者へのインタビュー映画『なみのおと』の続編。
酒井耕・濱口竜介両監督は前作の完成から1年以上撮影を継続し、 宮城県気仙沼市と福島県新地町の被災者、約20名の対話を新たに『なみのこえ』としてまとめた。
人々が抱える問題も思いも発生直後とは違って来ている現在、出演者=インタビュイーは、夫婦や親子、友人、職場仲間たちとの会話の中で薄れて行く記憶を呼び戻し、思いを新たにして行く。前作『なみのおと』では、津波被害の体験者同士が共に震災と向き合う「新しい言葉」をつくりだしていく過程が記録され、鑑賞者からは「言葉に強い現実感を 感じた」という反応が多くあった。
この現実感を未来の人々へも届けるため、監督達は劇映画の手法をドキュメンタリー映画に適用するという前作の様式を徹底 する。
日常-非日常、被災者-非当事者、聞くこと-語ること、被写体-鑑賞者、シリアス-ジョーク、二人の監督、フィクション-ドキュメンタリー、あらゆる分断線を越えた境界から未踏の故郷=現実は生まれ、震災を知らない100年後に暮らす人々と私たち、そして過去に生きていた人や動物やモノとを繋いでいる。